全世界で500万枚の売り上げを誇る、過去5枚のアルバムから11曲を厳選。
さらにライブ・トラックを2曲加え、日本盤には
「イマジン(ジョン・レノン)」を追加した全14曲!
元を正せば宗教音楽である。なんの話かって、グレゴリアン・チャント。10数年前にエニグマがダンス・ミュージック化して話題になったこの音楽は、そもそもローマ帝国が滅びて暗黒時代を迎えたヨーロッパ大陸で、グレゴリウス一世が制定した典礼音楽を基盤に持っている。だから教会に縁のない人が縁遠い印象を抱くのは当然で、裏を返せばエニグマは、大胆な手法を用いてグレゴリアン・チャントの「音楽」としての美しさを一般層に知らしめたともいえる。
というところで、話題はグレゴリアンについて。実はこのユニット、そのエニグマのマイケル・クレトウのパートナーであり、サラ・ブライトマンのプロデューサーでもあるフランク・ピーターソンのプロジェクトだ。ってことはエニグマ的であるに決まっていて、格調高き英国教会の聖歌隊がアンビエント・サウンドをバックにロックやポップスの名曲を歌い上げるという、掟破りのスタイルが貫かれている。
これがいかに大胆で、そしてベタな手法であるかは、R.E.M.からエリック・クラプトンまでの楽曲をネタにしている点からも明らか。早い話、敬虔な人たちが目くじらをたてるような手段かも。だが宗教的意味合いとは別なところで音楽としての美しさを備えているのは事実なのだから、こういう手法があってもいいと僕は思う。
事実、音楽として捉えた場合、透きとおるようなハーモニーは純粋に心地よくそして感動的だ。「そもそも企画性が強いんだから」と意地の悪い捉え方をしてみたりもしたのだけれど、それでも聴いているうちに何度かいいようのない感動に襲われた。それこそが恐らく、歌の力なのだろう。
つまり、純粋に楽しめばいいということだ。音楽なんだから。(文:印南敦史)