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サリー・セルトマン・インタビュー


iPodのTVC「1234(ワン・ツー・スリー・フォー)」で一躍スターダムにのし上がったのはファイストだけではなかった。あの曲のライターであるサリー・セルトマンも脚光を浴びることとなった。初のソロ・アルバムを発売するサリーにインタビューをしてみた。


sally Seltman
――ファイストの「1234」を作ったのはどういうきっかけで? サリー・セルトマン(以下SS):New Buffaloのファースト・アルバムは、カナダとアメリカではArts & Craftsからリリースされたので、北米をツアーして廻ったの。特にカナダではFeistのサポートだったのをきっかけに自然と友達になって音楽のことを始めにいろんな事を話すようになったの。そしてちょうどツアーが終わる頃にあの曲を書き上げていたので、歌ってみないかと彼女にたずねてみたの。ノート・パソコンを使って録音しただけだったっんだけど、それを彼女はライブでもうたうようになって。段々気に入ってくれて彼女が少し手を加えて、新しい歌詞をたしたりしたものをレコーディングしてアルバムに収録されたわけ。それが幸いにもiPodのCMに起用されて大ヒットというストーリー。 ――あの曲が成功して、あなたはどう感じましたか? SS:驚いたわ。嬉しい驚きだったわ。彼女があの曲を使うかどうかさえわからなかったんですもの。彼女のバージョンもとても気に入っているし。 ――あの曲を自分では歌わないの? SS:いまはまだその時期ではないような気がしているの。自分でもちょっと分からない部分もあるけどね。次のアルバムでは歌ってみようかしら? ――今、どちらにいらっしゃいますか? SS:シドニーよ。ここに住んでいるの。 ――デビュー・アルバムが完成して、それが日本でもリリースされることについて、どんな気持ちですか? SS:日本でリリースされることになって嬉しいわ。アルバムが完成して、リリースされるのは嬉しいものよ。 ――生まれ育った場所がどんなところか、教えて下さい。 SS:うちは大家族で、姉が1人、兄が2人、弟が2人いるんで、郊外の大きな家で育ったの。家ではしょっちゅう音楽が流れていたし、私も子供の頃音楽やダンスや歌のレッスンを受けていたの。 ――ご家族で楽器を弾かれる方はいらっしゃいますか? SS:姉がピアノを弾くし、兄の1人はベースを、もう1人はギターを、そして一番下の弟はドラムを叩いているの。 ――あなたが音楽に興味を持ったのも、そういったことが大きく影響したのでしょうか? SS:そうね、生まれた時から母親がいつも歌って聞かせてくれていたので、音楽は私たちにとってとても大事なものだったの。今思えば、家がどれだけ音楽で溢れていたかがわかるわ。いつも誰かが歌ったり演奏したりしていたんですもの。 ――あなたが音楽を始めたのはいつ頃ですか? SS:歌を始めたのはかなり小さい頃だったけど、ピアノのレッスンを始めたのは10歳の時だったの。そして、16歳の頃に独学でギターを始めたのよ。 ――バンドなんかは? SS:ええ、18歳の時に親友と一緒にパンク・バンドを始めたの。結構メロディックだったけど、PavementやHole、Sonic Youthといったバンドが好きだったのよ。このバンドで、私はギターを弾いていたの。 ――今挙げられたバンドに影響を受けたと言えますか? SS:そうね、大好きだったんですもの。それと、ジュリアナ・ハットフィールドの最初のバンド、Blake Babiesも好きだったわ。 ――Banglesもお好きだったのでは? SS:ニュー・アルバムを作っていた時は、Banglesの曲をよく聴いたの。若い頃も聴いていたけど、特に今回のアルバムを制作中によく聴いていたのよ。 ――デヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス」もお好きだとか。 SS:そう、「ツイン・ピークス」が大好きなの。デヴィッド・リンチの映画も好きよ。あのダークなところが好きなの。「ツイン・ピークス」の音楽も好きよ。 ――ソロ・デビューすることになった経緯を話してください。 SS:New Buffalo名義で何枚かアルバムを作って、これが私だけでバンドでないってことを人に説明しないといけなかったんで、変えたいと思ったのよ。それに、今回のアルバムはこれまでのとはちょっと違っていたの。New Buffalo名義の2枚のアルバムは家で1人でレコーディングしたけど、今回はフランソワ・ティータズとの共同プロデュースでもあったんで、そろそろ本名で出すのがいいんじゃないかと思ったの。 ――普段、どうやって曲作りをしますか? SS:最近は主に、ピアノで曲作りをしているの。たまに、公園を歩いている時にアイディアやメロディを思いついたりすることもあって、頭の中で歌いながら、家に戻ってからそれを曲の一部に組み込んだりすることもあるわ。もしくは、ノートを持って外に出て、歌詞のアイディアが浮かぶとそれを書き留めておくこともあるの。この間は、友達がそのまた友達の恋愛話を聞かせてくれたわ。彼女が彼と会っていないって。そういった、人から聞いた話を元にして歌詞を書くこともあるの。 ――では、アルバムについて。まず始めに、どんなアルバムを作りたいと考えていましたか? SS:ビッグなドラムを入れたいと思ったし、かなりアップリフティング(元気)なポップ・ソングにしたかったの。ハーモニーをたくさん入れて、キャッチーなメロディもたくさん入れたかった。曲を作って、そういったアイディアをたくさん頭に入れておいてからスタジオ入りしたの。

«前半より

――いつ頃から曲作りを始め、レコーディングを始めたのですか? SS:何曲かは、以前作ってあったけどレコーディングしていなかったものなの。でも、大半は2007年末から書いたものよ。2007年の11月から12月にかけてかなりの曲を書いたの。そして、そして、2008年の中頃からプリプロダクションを始めたのよ。 ――以前作ってあった曲というのはどれですか? SS:“Happy”よ。これは、数年前にロンドンにいた時に作ったの。公園を歩いていた時に、メロディが頭に浮かんだのよ。ビートは私の足音だった。そうして出来た曲なの。 ――メロディはあなたの音楽にとって重要な要素だと思いますが、メロディについて特に意識したのはどんなところですか? SS:特に意識はしないわね。自然と、強力なメロディのあるものを作ろうとしているんだと思うわ。“Misty”というジャズのスタンダード・ナンバーがあるけど、コードがなくても協力なメロディ故でメロディだけでちゃんと成立するものをね。 ――歌詞についてはどうですか?何か意識していることはありますか?それとも、これまた自然に出来るのですか? SS:かなり楽に出来る歌詞もあるけど、歌詞に時間をかけることの方が多いわね。まずはどういったことについての曲にしたいかといった全体的なアイディアを考えないといけないし、微調整してこれだと思うものが出来るまでには時間がかかるの。 ――アレンジには70年代あたりのポップスが持っていたキラキラした感じが出ているように思いました。遊び心もあるし、普遍性もあるというような。そのあたりで意識したことは? SS:Fleetwood Macのアルバム「Rumours」が大好きなの。今回のニュー・アルバムのアレンジに関して言うと、共同プロデューサーのフランソワ・ティータズが手がけたものが多いけど、私もフィル・スペクターとかが好きなので、ああいった淡い感じの音作りにしてみた曲もあるのよ。 ――歌い方についてはどうですか? SS: Fleetwood Macのスティーヴィー・ニックスが大好きなの。ジュリアナ・ハットフィールドが好きだった時期もあった。彼女の音楽をよく聴いていたの。イギリスのThe Sundaysが好きだったわね。 ――本作の共同プロデューサー、フランソワ・ティータズとは、このアルバムをどういう風にしようと話していましたか? SS:何週間か一緒だったの。まず自分1人で曲の大半のデモを作って、それから2人でデモを聴いて、メモを取って、各曲をどうすればいいか話し合ったのよ。各曲に合う楽器やテンポについて話し合ったの。“The Truth”は、元々はすごくスローなピアノ・バラードだった。今でも結構スローだけど、最終レコーディングではまたちょっと違った感じになったの。曲の大半は、ベース、ピアノ、ドラムを本格的なスタジオでレコーディングしたの。そして、レコーディングしたものをそれぞれのスタジオに持ち帰って、私はいろいろなハーモニーをつけてみたり、キーボード・パートを加えたりしたの。フランソワはストリングスやホーンを加えたりしたわ。 ――共同プロデューサーとして、彼はあなたのどういった面を引き出してくれたと思いますか?SS:彼は、私をポジティブにしてくれたと思う(笑)。ボーカル面でも、彼は私をプッシュしてくれたし、"Set Me Free"といった曲のアレンジ で軽快なフィーリングを出してくれたわね。彼がとても熱心にやってくれたから、私も集中してエキサイトしながら全体のプロセスをこなすことが出来たわ。 ――彼はこれまでに、いろいろなアーティストのプロデュースを手がけて来たのですか? SS:彼は、映画音楽を手がけているの。オーストラリアの名ホラー映画『Wolf Creek』の音楽を手がけたのよ。バックパッカーが殺されて行くという、実話を元にした映画なの。あとは、Architecture In Helsinkiやゴーティエも手がけたわ。 ――ゲスト・ミュージシャンも多いようですね。キーになる人がいたら簡単にその人について話してください。 SS:The Middle Eastと言うオーストラリアのバンドが“5 Stars”でバッキング・ボーカルとして参加しているの。あと、“Dark Blue Angel”ではイェンス・レックマン、ネッド・コレット、主人のダレン、Architecture In Helsinkiのカメロン・バードが男性バッキング・シンガーとして参加しているわ。そして、親友のララが“On The Borderline”でバッキング・ボーカルをやっている。彼女はLAに住んでいて、El May名義でレコーディングしているの。あと、ライブ要員のジェシカ・ヴェナブルズがボーカル・ハーモニーで参加しているわ。 ――アルバム・タイトルを『Heart That’s Pounding』とつけた理由は? SS:同名の曲が収録されているし、これが一番強力なアルバム・タイトルになると思ったの。このアルバムを要約するにはいいタイトルだと思ったのよ。私の歌詞には“heart”という言葉がよく出て来るんで、私に合っていると思ったの。女性らしいけれども、同時に強くもあるんですもの。 ――収録曲のなかで、特に思い入れの強い曲、好きな曲、またはキーとなる曲を3~5曲挙げていただき、その理由を話してください。 SS:“On The Borderline”が大好きなの。歌うのが大好きな曲で、3月に『South By South West』でも歌ったのよ。すごく楽しかったから、今のところ私のお気に入りはこの曲ね。あとは、“The Truth”も大好きね。あのトロピカルなスウィング感が気に入っているの。歌詞も気に入っているし。 ――リスナーには、あなたの気持ちを理解してもらいたいと思いますか?どういう風にアルバムを聴いて欲しいですか? SS:私はむしろ、曲を聴いて、それがその人の人生となんらかの形で結びついてくれればいいと思っているの。共感してもらえたら嬉しいわ。私も、好きな人の音楽を聴く時はそうしたいんですもの。自分の人生の何かを彷彿させてくれるものであって欲しいんで、私の曲もリスナーの世界に取り込んでもらって、彼ら自身にとって意味のあるものであって欲しいの。 ――ズバリ、あなたにとって音楽とは? SS:音楽は私にとって、セラピー的な役割を果たしているの。聴くにしても、歌うにしても、曲を書くにしてもよ。音楽がなかったら、私の人生は随分と違うものになっていたと思うわ。音楽は人々を結びつけるものだし、とてもエモーショナルなものなんですもの。音楽は自分を人生のいろんな時期に連れて行ってくれるし、ある人や場所を思い出させてくれるから、人生においてとてもスペシャルで大事なものよ。 ――これから先の夢やビジョンについて話してください。 SS:またアルバムを作りたいし、映画音楽も作りたいわ。そして、他のシンガーとも一緒に曲を作って行きたいわね。常に音楽的にチャレンジしているという実感の湧くことをやって行きたいわね。だから、次のアルバムはまた違うものになるでしょうし、テーマも違って来るでしょう。全く新しい見解でもって各プロジェクトに臨んで行きたいわ。 ――ライブはたくさんやって行くのですか? SS:こっちでは結構やっているわよ。3月には『SXSW』と『CMW』に参加したし、6月にはアメリカ・ツアーがあるの。7月にはオーストラリア・ツアーがあって、主要都市を廻るの。 ――オーストラリアはShock Records、北米はArts & Crafts、日本ではImperial Recordsと、とても個性溢れるレーベルと契約をしていますね。あなたやマネージメントのチョイスですか?それぞれのレーベルはいかがですか? SS:Arts & Craftsに関しては、New Buffaloのファースト・アルバムを聞いて私のところに連絡して来て、アルバムを出したいと言って来たの。私に合っているレーベルだなと思ったんで、契約したのよ。オーストラリアのレーベルに関しては、このアルバムに一番合ったレーベルをマネージャーと一緒に探して見つけたの。そして、Imperial Recordsが日本でアルバムを出してくれるのはとても嬉しいわ。 ――最後に、日本のリスナーに向けて一言。 SS:アルバムを気に入ってくれると嬉しいわ。そして、日本でライブも出来るといいわね。私の曲があなた達の人生に何らかの形で役に立てばと思うわ。そして、楽しんで聴いてね。

インタビュー構成: 内本順一
通訳: 川原真理子


SALLY SELTMANN
“HEART THAT’S POUNDING”

2010年6月23日発売

スペシャル・プライス ¥2,280(定価)
日本盤ボーナス・トラック2曲収録

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